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●とりっくおあとりーとぉ~
「【やぁ、皆のお姉さん・・・千怜さんだよぅ】とか言って格好よく出て行く予定だったんだ」
なんたる恥辱!と顔を赤く染めながら八つ当たりのように憤慨して千怜は戻ってきた。
「まあまあ・・・ところで、そろそろ始めませんか?皆貴方を待ってたんですから」
なだめながら進行を進めようとしているのはライトだ。
やはり年長者、頼りになるお兄さんだ。
「むっ、そうだな。では・・・」
そう呟いて千怜は勾燐の元へ行った。
「やあ勾燐、Trick or treat!」
「お、俺か!?」
あたふたと慌てている勾燐は、猫耳&尻尾のせいか、可愛く見えたのであった。
「ほらほらどうした~?早くくれないと悪戯するぞ~?」
ジリジリと迫ってくる千怜はとても楽しそうだ。
危険を感じた勾燐は、急いで持ってきていた包みを押し付けるように渡した。
「ほほぅ。中身は何だ?」
ガサゴソと包みを開けると、カボチャのマフィンが現れた。
「ふむ。中々美味しそうじゃないか」
爽やかな笑顔でそう言った千怜に、勾燐は付け加えるように言った。
「頑張って作ったんだぜ?味わえよ」
「・・・・・・は?」
聞き捨てなら無い勾燐の言葉に、千怜だけではなく他の皆もいぶかしげな目で勾燐を見た。
「勾燐が・・・作った?」
千怜の質問に、勾燐はあっさりと答えた。
「だからそう言ってるじゃねぇか。何だよ、俺が作ったらおかしいのか?」
おかしい?いや、おかしくは無いのだ。ないのだが・・・。
「勾燐がお菓子作り・・・エプロンつけて?お菓子作り・・・っく」
「な、何だよ?」
「くはははははは!!」
エプロン姿で楽しくお菓子作りをしている勾燐でも想像したのであろうか、千怜は突然笑い出した。
「ひいぃぃ!?」
目の前で突然大笑いされて、勾燐はたじろぎ後ずさった。
千怜の笑いが収まる頃には、勾燐は部屋の隅でいじけていた。
そんな勾燐をほうって、皆はお菓子強奪戦を繰り広げるのであった。
笑い終わった千怜の元に、密とライトがすかさず向かった。
『とりっくおあとりーと~!』
二人の声がハモる。
「むっ、私の元には二人来たか。だが争う必要はないぞ?渡す相手は私が決める!」
そう言っておもむろに密に包みを渡す。中身は秘蔵の芋羊羹だ。
「わ~千怜先輩ありがとう!」
喜ぶ密。
「ちょっ!?それはなんだかずるい・・・」
不満をこぼすライトには、仕方ないので他のものをやった。
「後で皆と食べようと思っていたパンプキンタルトだ」
「いやはや・・・お菓子もらえて嬉しいですよ」
ライトはそう言ったが、複雑な心境だった。
(くれないならくれないでいたずらしたかったな・・・)
そして次に、ライトの元へ小羽がトコトコと近づいた。
「えっと、とりっくおあとりーと、です」
「ん?宮崎さんですか。・・・あげなかったらどんな悪戯をしてくれるんですか?」
「え?えーと・・・」
思わぬライトの反撃に小羽は言葉に詰まった。
「ははは、すみません冗談です。さ、どうぞ?」
小羽は差し出された包みを受け取り、中身を見る。
「わ、クッキーですね。おいしそう」
「手作りなんですよ?」
ライトが付け加える。
勾燐に続きライトまでも!?
ライトの言葉を聞いていた皆に、沈黙が落ちる。
だが、それだけだった。
勾燐のときのように笑いがこだまするわけでもない。
『ライトがお菓子作り』という事実には、皆何故か納得がいったようだ。
「そうなんですか!?お上手なんですね」
小羽の笑顔のセリフで、場の空気が元に戻る。
「そうそう、私は皆さんに持ってきたんです」
そう言って置いてあった荷物の中の一つを持ってきた小羽は、一つ一つカラフルにラッピングされた包みを皆に渡した。
中身は可愛らしいプチカステラだ。
「紅茶ももってきたんですよ?」
と、小羽はカップに紅茶を注いでいく。
それに続き、密も個別包装して持ってきたお菓子を皆に渡した。
こちらは小さめのパンプキンタルト。
そしてそれまで黙っていた沙智が、テーブルの空いているところに何故か縦方向に巨大なパンプキンパイを置いた。
「頑張って作ったけど・・・ちょっと味が変かも・・・ごめんね?」
心配そうに微笑む沙智。一体こんな巨大なものを今まで何処に隠し持っていたのだろうか。
「では皿に取り分けよう!」
千怜が仕切って、そのままパーティが始まった。
「あ!それ美味しそう・・・頂戴?」
「・・・いやだ」
沙智のおねだりを無下に断る陽人。
「う~。・・・あれ?そういえば陽人はお菓子持ってきてたっけ?」
「どうだろうな・・・」
適当にはぐらかし、陽人は沙智から離れていった。
こうして、陽人が何も持ってきていないことは、そのまま知られることなくうやむやとなったのであった。
「そうだ!私からも皆にあげる菓子を作っていたんだった!」
少しして、突然千怜が思い出したようにそう言い、冷蔵庫からパンプキンプリンを持ってきた。
それををみんなの前に置く。
「私から皆への贈り物だ。プリンにタルト。不味くはないと思う」
千怜が一人づつ渡し、それを嬉々として受け取るもの。恐る恐る取るもの。
陽人だけは前回が前回なため、取るときに千怜に『変なもの入ってたら承知しないぞ』と目で訴えていた。
皆に行きわたると、同時に口にした。
「おいし~」
「なかなかの味ですね」
「・・・・・・今回は変なものは入ってないようだな」
さまざまな感想が入り乱れる中、勾燐が奇妙な顔をした。
「・・・・・・味しないぜ?・・・っていうか何?これ豆腐?」
「おお、勾燐に当たったか!どうだ?結構力作なんだが?」
ふっふっふっと含み笑いをしながら千怜が言う。
「そうだな、本当に見た目に騙された!畜生。ってかお前がただで終わるわけがないよなぁ・・・」
力なくうなだれた勾燐の肩に手を置き、千怜はもう一つプリンを差し出した。
「くく、冗談だ。千怜さんのお茶目という奴だ。ちゃんとしたのも用意してある」
千怜も、前回のことで多少懲りたのか、ちゃんとフォローとなるものを用意していたようだ。
「・・・ん、こっちは上手いな」
パクリと新しいプリンを口にして、勾燐は素直な感想を述べた。
●鍋奉行の敵は鍋奉行!?
お菓子も食べつくした頃、千怜が土鍋を持ってきて言った。
「もう夕食時だろう?事前に鍋を作っておいたんだ。さぁ、皆の者存分に食すがいい!」
千怜の掛け声のあと、勾燐の方からシュ~という音が聞こえた。
「あ!忘れてた。連れて来てたんだったな、出て来いよ女郎花」
勾燐の言葉に従うように、勾燐の服の中から白蛇がウニョウニョと出てきた。
「シュ~」
「なんだ来ていたのか、良かった。女郎花のために用意しておいたつみれが無駄になるところだった」
千怜はそう言って、女郎花に生のつみれを差し出す。
「シュシュー♪」
言っていることは分からないが、動きでどれだけ喜んでいるのかはよく分かった。
そして女郎花も混ざり、皆で鍋を囲んだ。
「ああ、そこ肉ばかり食うな。野菜を食え、野菜を!」
鍋奉行・千怜。鍋の前を陣取ってちゃきちゃきと指示を下す。
「まだ、手を出すな…よし、今だ熱い内に食え。旨味が逃げる前に!」
「ちょっとまてぇい!」
静止の叫びは、千怜の真向かいにいた勾燐だ。
「旨みはある程度冷めてからのほうが出てくるのもあるんだ。なんでもかんでも熱いうちに食わすな!」
身を乗り出して千怜を睨む。
「っふ、キサマも鍋奉行か・・・?面白い」
不適に笑い、千怜がいきり立った。
「勝負だ!」
「望むところだ!!」
鍋奉行でどう勝負するのだろうか。
とにかく、二人の世界に入ってしまったやつらはほっといて、他の皆は思い思いに鍋を突付いていた。
沙智と小羽はしばらくの間険悪な二人をあたふたと見守っていたが、結局は食欲に勝てずに鍋の元へ戻った。
鍋も終わり、沙智が今日を振り返って呟いた。
「ハロウィンって良いよね・・・みんな集まれて・・・楽しめるし、お菓子もいっぱい・・・この結社で良かったな、って・・・思える・・・」
その言葉が締めくくりとなって、ハロウィンの夜は終わりを告げたのだった。
END
桐嶋 千怜 (b01805)
朱月 勾燐 (b02638)
片倉 陽人 (b03249)
鷹岡 沙智 (b06419)
宮崎 小羽 (b07485)
木立 密 (b07585)
孤月 ライト (b07604)
この偽シナリオは朱月勾燐の苦労と努力の結果完成した物です。
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そしてさぼてんラブです。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、桐嶋千怜が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は桐嶋千怜に、著作権は東原史真に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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