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●プロローグ
それはある日の事。
いつものように皆で和室でくつろいでいたとき、団長・桐嶋千怜(高校生霊媒士・b01805)がぽつりともらした。
「そろそろ何かやりたくない?」
その問いは誰に向けられたものなのか、答えはその次の言葉で明らかになった。
「ねえ、勾燐?」
「俺かよ!?」
即座の突っ込み。
朱月勾燐(高校生ゾンビハンター・b02638)は諦めたようにため息をつき答えた。
「はー・・・何かなー。時期的にハロウィンでもするか?」
「おお!いいじゃないかハロウィン!」
千怜の嬉々とした叫びに続き、他からも喜びの声が聞こえてくる。
「じゃあお菓子とか持ち寄って!」
「うん!衣装とかもほしいよねー」
なんだかどんどん話が決まっていく。
「じゃ、じゃあハロウィンで決定ってことで・・・」
早くも疲れが見え始めている勾燐の声に、一同はおー!声をそろえた。
●千怜を探せ!
10月31日、結社『泡沫』の一室。
いつもはあまり使われていない洋室には、事前に皆で用意したハロウィンの飾りが隙間なく埋め尽くしている。
そんな部屋で皆を待ちながら、桐嶋・千怜(高校生霊媒士・b01805)は最後の飾りであるカボチャランタンをテーブルの中央に置いていた。
「さてと、あとは・・・」
呟き、千怜はその場から姿を消した。
「この学園で初めて出来た先輩たちとハロウィンパーティーをするなんてとても楽しみです」
結社に着く前に皆で合流した後、狼女の扮装の宮崎・小羽(中学生符術士・b07485)はそう切り出した。
「そうだね、皆で楽しめるといいよね」
小羽に相槌を打つのは鷹岡・沙智(中学生ファイアフォックス・b06419)。こちらは狼男だ。
「うんうん!楽しそうだもんね。・・・ところで、確かハロウィンてお菓子が沢山貰える日、なんだよね・・・?」
二人に同意して、不安げにハロウィンのことを確かめてくる木立・密(中学生ゾンビハンター・b07585)。
密は黒マントにプラスチック製のジャック・オー・ランタンを被っているため顔は見えない。
「うーんとだな。ハロウィンは、キリスト教の全ての聖人の日(11月1日)の前日の晩に行われる伝統行事で、ケルト人の収穫感謝祭がキリスト教に取り入れられたものとされているらしい。ケルト人の1年の終りは10月31日で、この夜は死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていて、これらから身を守る為に仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていた。これに因み、31日の夜、カボチャをくりぬいた中に蝋燭を立てて「ジャック・オー・ランタン」を作り、魔女やお化けに仮装した子供達が「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ)」と唱えて近くの家を1軒ずつ訪ねる。家庭では、カボチャの菓子を作り、子供達は貰ったお菓子を持ち寄り、ハロウィン・パーティーを開いたりする。・・・と」
聞いていない専門的なことまでも話し出したのは朱月・勾燐(高校生ゾンビハンター・b02638)である。クロネコをイメージしたのか、付け耳と付け尻尾をしている。
「よく知ってるな?」
さして興味もなさそうに聞いてくるのは片倉・陽人(高校生霊媒士・b03249)。黒マントだけの格好は、ドラキュラに見えないことも無い。
「ウィキペディアフリー百科事典参照!」
陽人の質問に、はっきりと答えた勾燐。
「って、見ながら話してたんですか?どれどれ?」
勾燐の持っていたメモを奪い取り物色する孤月・ライト(高校生ファイアフォックス・b07604)。彼の装いは・・・なんと言うか、まさに魔王だ。ちゃんと角もつけている。
「ハロウィンのテーマは不気味なものや怖ろしいもので、特に、死、アンデッド、黒魔術や神話の怪物などが含まれる。幽霊、魔女、コウモリ、黒猫、ゴブリン、バンシー、ゾンビ、魔神、ドラキュラ、フランケンシュタインなどが一般的に含まれる・・・」
ライトは続きを読み返す。
「えっと・・・つまり・・・。・・・・・・どういうこと?」
密が改めて聞いてくる。ますます意味が分からなくなったようだ。
「う~ん。とにかく、仮装してお菓子食べて楽しもうってことだよ」
自分の解釈で答える沙智。
他に誰も突っ込まないので、密もそれで納得したようだ。
そんなやり取りをしている間に結社についた。
「やはり挨拶はアレですよね?」
愛らしい笑顔でそう言った小羽に、皆は当然と言うように頷いた。
「では・・・」
ガチャ
『Trick or treat!』
「きゅ~?」
『は?』
沈黙が流れた。
扉を開け、千怜が出迎えてくれると思っていた一同は、思わぬ存在に呆気にとられた。
シャーマンズゴースト。
皆は思った。
(誰の!?)
少なくとも今ここにいるやつのでは無いだろう。最初からココにいたのだから。
では千怜?いや、彼女はシャーマンゴーストを所持してはいなかった。
考え込み動けずにいる一同。その中で沙智がソレに気付いた。
「あ!?お腹の辺りに何か紙が貼ってあるよ!?」
沙智の言葉でやっと気付く。でかでかと貼られたソレに、何故気がつけなかったのか・・・。
その紙には【材料が切れた買い出しに行ってくる。】と書かれていた。
明らかに千怜の字である。というか、他にいるわけが無い。
「きゅ~?」
立ちっぱなしで動こうとしない一同を不審に思ったのか、シャーマンゴーストが首を傾げた。
無垢な瞳が何とも愛らしい。
「この子可愛いです・・・」
小羽が思わずポツリとこぼす。
他の皆も同じ思いなのは表情を見ても明らかだ。いや、陽人だけは無表情で何を考えているのかよく分からない。
「きゅ、きゅ~」
シャーマンゴーストが微妙に手招きをしながら何処かへ誘導しようとしていた。
案内役ということだろうか。洋間へ行こうとしているようなのだが・・・。
くるりと反転したシャーマンゴーストは、何だか引っ掛かったようで、動けなくなっていた。
「きゅ、きゅ?」
慌てた声も愛らしい・・・。
そのまま前に進むことは諦めたのか、ゆっくりと入り口の方を向いて後退しだした。
・・・・・・後退なら出来るようだ・・・。
「きゅ~」
何とか洋室につき、皆隅っこの方に荷物を置いた。
千怜が戻ってくるまで部屋の飾りを見て回るなどして時間を潰していたが、とうとう陽人が痺れを切らした。
「・・・千怜はまだか?」
ため息交じりの声の直後、何処からかドラムロールが聞こえ、スポットライトがシャーマンゴーストを照らした。
「何だ!?」
「どうしたの!?」
驚きの声の中、シャーマンゴーストは小刻みに震えながら怪しげな動きと共に背中にある何かを掴もうとしていた。
だが・・・。
「っうきゅ!?・・・くそっ」
届かないのか目的の物が掴めない。
ぴょんぴょんと跳ねているがそれも無駄らしい。
ここまでくると、このシャーマンゴーストの正体が誰なのか、皆分かっていた。
頑張れ~と応援する者。
空笑いをする者。
突っ込む気すら失せ、白い目で見つめる者。
それらに耐えられなくなり、シャーマンゴースト――千怜は逃げ去ったのだった。
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そしてさぼてんラブです。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、桐嶋千怜が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は桐嶋千怜に、著作権は東原史真に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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